今年の5月1日に作曲家モーリス・ラヴェルの作品「ボレロ」の著作権が消滅したというAFPの記事又はその記事を転載したヤフー等の記事がFBでも話題になっているので、
以下コメントします。
今年の5月1日に消滅した著作権は、ラヴェルの作品(「ボレロ」だけではなくラヴェルの1914年8月2日以後に発行の全作品)のフランス国内での著作権であって、日本
国内でのラヴェルの全作品の著作権は1990年代の終わり頃に既に消滅しています。
日本の著作権法では著作権の保護期間は著作者の死後50年(死亡した日の属する年の翌年から起算)までですが、第
二次大戦の連合国である米国、英国、フランス等の戦前の著作物については死後50年に更に3794日(約10年)の
戦時加算がされることになっています。
1937年12月28日に亡くなったラヴェルの全作品は戦時加算の対象になるので、ラヴェルの全作品の日本国内における著作権は1998年には消滅しています。
一方、フランスの著作権法では保護期間は著作者の死後70年(死亡した日の属する暦年とそれに続く70年間)まで
であり、それにフランス国内適用の第二.次大戦の戦時加算が8年120日あるので、ラヴェルの
1914年8月2日以後に発行の全作品のフランス国内の著作権は今年5月1日に消滅したことになります。
従って、多くの国においてはラヴェルの作品の著作権は既に消滅しているはずです。
なお、フランスの著作権法を読むと、第一次大戦の戦時加算(1919年法:6年152日延長)があります。 「ボレロ」は1920年代の初演なので第1次大戦の戦時加算の
対象ではありませんが、「1914年8月2日前に発行」の作品が第一次世界大戦の戦時加算の対象になります。
従って、ラヴェルが「1914年8月2日前に発行」した作品(例:「亡き王女のためのパバーヌ」(1899
年)、「スペイン狂詩曲」(1907年)、「マ・メール・ロワ」など)は未だフランス国内で著作権が消滅していないと思います。
故に本来、日本国内において話題になる話ではないと思います。私個人としてはフランスのラヴェルよりもドイ
ツの作曲家カール・オルフ(1982年3月29日没)の作品の著作権が消滅する日(日本国内では2033年1月
1日)が待ち遠しいです。